アカデミーでの寄宿生活は快適だったよ。家を離れると本当に涙が出るくらいほっとするんだ。
僕はちょっとおかしくなっていてあんまり日常の事は上手にできないから、ずっとディリータが助けてくれて、アグネスもなんとなくくっ付いてくるから三人で仲良くしてた。彼女は以前、お嬢さん過ぎて時々嫌になることもあった。でも特別な箱入り娘だったんだから仕方ないよね。僕だって母さんに会わせてもらえずに育ったら、きっと貴族の生活に嵌まり込んでしまって、もしかするとディリータにすら酷いことをしてしまったかもしれないもの。アグネスは今じゃなんだか下品になるように毎日一生懸命だ。それも僕のせいだって知っているけど、お互いそれを言わないようにしてる。それに下品なアグネスの方が好きだな。僕が変なことを言っても気にしないでくれるから。
ただね、時々神様に申し訳ないと思ったよ。二人の事じゃないよ、僕の兄上の事。兄上がどんなことを考えていたのかは別だ。やっぱりああいう事をするのはおかしいんだ。他のやり方があったはずなのに、僕のせいてああなってしまったんだと思う。僕は生まれついてそうなるように仕掛けられていた淫売なんだ。本当ならあの時に、男娼宿にでも売られてそこで男に抱かれて生きていくのが相応しかった。そういう事を言うといつもディリータが悲しそうで怒ったりするから言わなかったけれど、僕は今でもそう思ってる。
また休暇になって僕らはしぶしぶ家に帰った。どうして年に三回も休暇があるんだろう。春と夏と、あの時のような年の終り。一月も寄宿舎が閉まってしまう。僕もディリータも家に帰るしかなくて、前の日にはほとんど徹夜でセックスした。家に帰ったらそんなことは到底できないから。セックスしている間中、ディリータはなんにも言わなかったけれど、始終心配そうに僕を見つめてた。そういうディリータの目が大好きだった。でも、これから始まる一月を思うと酔ってもいられない。僕は兄上の人形にならなきゃいけないんだから。
屋敷ではハンナがにこにこして僕を迎えてくれた。僕は人目をはばかりながら、ハンナにぎゅっと抱きついて頭を撫でてもらった。もうオトナなんだからこんなことしちゃ駄目だって皆に言われていたからね。随分年を取ったのに、ハンナはいつも元気にくるくるよく働いて僕の面倒をみてくれた。以前より物事を上手く扱えなくなった僕に気が付いていただろうけれど、それを言わずにいてくれた。兄上との事だけは知られてはいけないと、ハンナの顔を見ると本気で思ったよ。僕を育ててくれた優しい乳母をこれ以上悲しませたくないって。
三日は平穏に過ぎた。兄上は二人共会議だかなんだかでイグーロスに泊り込みだって聞いた。でも、ダイスダーグ兄さんは早々に帰ってくる予定だった。僕の顔が見たいんだって。僕の顔が見たいんだって!
そうして早速帰って来たダイスダーグ兄さんが、「僕のために」晩餐を開いてくれた。兄さんは機嫌が良く、アカデミーでの話を聞きたがった。もちろん先生達から直接情報がいっているはずだけど。ディリータも同席していたから、彼の成績がとても良い事を褒めながら兄さんは満足そうだった。でも、その目に薄っすら怖い色が浮かんでいるのを僕らは知ってた。
食事が終わると思った通り、後で部屋に来なさいと兄さんが言った。その言葉で僕の周りの温度が一気に下がった。後っていつだろう。百年後、とかじゃ駄目なのかな。僕はうろたえてディリータの部屋に行って、だけどどうしようもなくってドアの前でちょっと泣いてから兄さんの部屋に行った。ディリータに訴えても彼が悲しむだけだってことくらい分ってた。
「おまえはいくつだったかな」
兄さんは書類を置いて僕を見た。相変わらずどうやっているのか分らないくらい冷たい目だった。
「十六です」
「それにしては軟弱な体つきだな。アカデミーでは鍛え足りないか?」
兄さんがゆっくり椅子を立っていつもの長椅子に座る。こっちへおいでと指が僕を招く。僕はぎしぎし鳴りそうな足をなんとか動かして兄さんの前に立った。
「よく見せなさい」
手つきが服を脱げって言ってる。僕は歯を食い縛っている。
「相変わらず何もできないのだな」
兄さんはとても愉しそう。腕を乱暴に掴まれ、膝の上に乗せられた。
「細いな……」
厭らしく、冷たい手の平が僕の胸に忍び込んでくる。
「こんなに骨ばっていては鎧なぞ纏えないぞ」
指の先で乳首を触っているくせに骨の話なんかしてる。ベルトを外されて僕は少し涙を零した。
「もっと鍛えなければいけないな」
こんなことをしたって何にもならないんだよ、兄さん。
「おまえはすぐ泣くからいけない」
あっという間に全部脱がされ、僕は両足を抱えられてみっともない格好で性器を曝す。くすぐるように太腿から指が這い、段々核心に近寄ってくる。そしていきなり後ろに指をつっこまれた。いくらなんでも痛くて僕は悲鳴を上げた。
「そんなことでは拷問一つ耐えられないだろう。我慢しなさい」
兄さんは荒っぽく指を動かしながら性器を掴んで扱き上げる。僕はうっ、うっと声を殺してそれでも感じ始める。嫌だ、とても嫌なのに。
「……慣れてるな。まだあの犬とまぐわっているのか? 悪い子だ」
兄さんだってディリータを犯したくせに。誰が獣なのか僕達は知ってるんだ。
鼻歌を歌いそうなくらい上機嫌で、鳴いている僕を兄さんは見下ろしている。一番感じる所をしつこく引っ掻かれて僕はもう滅茶苦茶になっている。こうなったらもうお終い、入れてもらうためなら僕は何でもしてしまうんだ。
僕が、あっと大きな声を出して吐精すると兄さんは耳元で低く笑った。
「困った子だ。本当に我慢の足りない……」
僕を突き飛ばすようにして床に放り出し、兄さんは口でするように手振りで示した。肝心なことは絶対言ったりしないんだ。そして僕は兄さんの思惑通りにしてしまう。中でいかせてもらわないと気が狂ってしまうから。
僕はぶるぶる震える手で兄さんの服をまさぐってペニスを探し当てた。その、勃起している様子を見るたびに、僕は情けなくて仕方なくなる。兄さんは怯えて泣いている弟を見て欲情するんだ。あの下賎の淫売の子、と蔑みながら、自分は一体何者のつもりなんだろう。僕は真っ暗な気持ちで兄さんの性器を口にくわえた。
僕が上手に舐めているのを兄さんは満足げに見ている。出来の悪い弟を可愛がるように、よしよしと頭を撫でる。僕はまた泣きそうになりながら、でもゆっくり泣くこともできずに必死で舐める。兄さんが獣なら僕もまた獣だ。欲しくてたまらないんだ。早くこれを体の中に入れて欲しくてたまらないんだ。
「欲しいか?」
兄さんは僕の顎に指をかけ、上を向かせる。
「はい、兄さん」
涙を堪えて僕は答える。ごめんなさい、と心の中で何者かに謝りながら。
「自分で入れなさい。私は気が進まないからな」
馬鹿じゃないかと思う。今更何を言うのだろう。でも、そう言うことで兄さんは安全になるのかもしれない。おそらく兄さんも何者かに言い訳がしたいんだ。
僕は素直に兄さんの上に乗った。兄さんの体を跨いで足を開き、唾液で濡れている性器を掴んで後ろに当てた。大きいし、大して慣らされなかったからすごく痛い。僕がはあはあ言って先っぽだけをなんとか押し込むと兄さんは両手で僕の腰を掴み、ぐっと全部を飲み込ませ、僕は苦痛の絶叫を上げた。
「どうした、ラムザ。欲しいんだろう?」
手伝わないって言ったのに、兄さんは逃げようとする僕の腰を掴んで離そうとしない。そればかりか僕の腰を上げさせて無理やり引き抜こうとする。猫の断末魔みたいな声を上げて僕は身を捩り、にこにこしている兄さんの顔に両腕を絡めた。すかさずまた根元まで一気に押し込まれ、体の中にごつん、と激痛が響くのに合わせて僕は潰れた悲鳴を上げた。唾液が溢れ、冷や汗が全身に流れる。確かにこれは拷問の練習だ。
「仕方の無い子だな。これを使いなさい」
やっぱり用意してあったんだ。こうして僕に悲鳴を上げさせるのが兄さんの愉しみ。性感は「ついで」のお楽しみに過ぎないんだ。
兄さんは小さな容器の蓋を開け、中身を僕に見せる。これを塗ったら楽になるのは分っているんだけれど、塗るためには抜かなきゃならない。そろそろと腰を上げ、内蔵が引き出されるような痛みに全身を震わせながら僕は、ふっと気がついた。
ディリータは、これを毎回されていたんだ。
彼は語りたがらなかったから僕も聞かなかった。でも一度だけ見たあの時、兄さんは何の準備もせず、何も使わず、いきなりディリータに入れた。兄さんはディリータを「穴」と呼び、「犬」と呼んで、その行為を「排泄」と言った。ディリータは苦痛の声を抑えることが出来ず、悔し泣きにむせびながら自分の腕に歯を立てていた。たぶん、いつもああして血を流すまでいたぶられていたんだろうな。
だから僕は兄さんの人形になることを承知したんだっけ。
やっとの思いで引き抜いて、僕はぼうっとその凶器を見つめた。促されるままにクリームを指に取って塗りつけていく。さっき舐めた時より大きくなってるのが怖かった。それに後ろも痛くてじんじんしている。でも、やっぱり、まだ欲しい。僕はディリータみたいにストイックに嫌がることはできないんだ。生まれつきの淫売だから。
自分の中にも塗りつけると、思った以上に性感が強くてびっくりして腰が浮いた。兄さんは面白そうに自分の指にもクリームを付け、僕の指の脇から僕の中に突っ込んだ。慌てて自分の指を引こうとしたけれど、手首を押さえつけられ、押し付けられた。兄さんはしばらく僕と一緒に僕の中をかき回して遊んだ。僕はだんだん狂ってきて、最後は腰を振りたてて、ペニスを下さい、と泣いて頼んだ。
兄さんは長椅子から立ち上がり、転げ落ちた僕の両足首を掴んでうつ伏せにし、腰をうんと高く上げさせると一気に突いた。僕はもう痛みなんかちっとも感じず、ただ気持ちが良くて喘ぎたいだけ喘いだ。兄さんは始め膝立ちで責めていたけれど、その内立ち上がり、僕の腰を掴んで激しく揺さぶった。僕はほとんど逆立ちになって、頭に血が上ってくるのを感じながら毛足の長い絨毯に爪を立てた。もっともっとと声を限りによがって気を失うまで三回くらいいかされた。
兄さんは十日ほど屋敷に滞在した。僕は昼間はディリータの側にいて、たまに手を繋いだりキスをして慰め合った。寝たりしたら兄さんにばれてしまうからね。夜は毎晩兄さんの部屋に行って滅茶苦茶に犯された。兄さんが急な用事でイグーロスに呼ばれなければ、それは休暇の間中続いたかもしれない。兄さんを乗せたチョコボが去っていくのを見ながら、僕は本当に嬉しくて必死で涙を堪えたよ。家では寝ないでおこうって約束したけれど、僕は兄さんを見送ってすぐにディリータの部屋に行き、鍵を掛けて昼間から何度もセックスしたよ。あれだけ兄さんにされたっていうのにね。ディリータはやっぱり何も言わずに僕を大事に抱いてくれた。比べるつもりなんてなかったけれど、ディリータの体の方が何倍も気持ち良かったのを覚えてるな。
だから、君がそんな風でもちっとも可笑しかないんだよ。だってすごく強烈な薬を使われたじゃない。あの薬はしばらく抜けないんだし、僕らは兄弟じゃないんだし、何にも困ったことはないんだよ。僕に比べたら君はうんと上品でストイックだもの、羨ましいくらいだよ。
泣かないで、大丈夫だよ、可笑しくないよ。ね、辛くないでしょ? 気持ち良くなっていいんだから、そんなに泣かないで、ムスタディオ。
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