警部!

「(ばたーん)御手洗先生! 難事件です!」
「これは警部、まあお茶でも如何ですか。おーい、石岡くん紅茶お淹れして」
「チップトリーが切れたよううううう!」
「LSDなんて飲んでも美味しくないだろう、なんでもいいよ!」
「チップトリー!! 味分かんない人は黙ってて!」
「全くもう仕方がないな! 失礼、警部。石岡くんはバレンタイン直後なんでカカオ中毒に悩まされて精神不安定なんですよ」
「やはり今年も沢山もらわれたんですかな」
「三食チョコが一ケ月続いて、さすがの石岡くんもキレましてね、残りは近くの幼稚園に贈りましたよ」
「それだああああ!!!!」
「どうしたんですか、あなたもカカオ中毒ですか?」
「そんな中毒になりたいもんですな……。違ぁう! 件の幼稚園で奇妙な事件が発生していたのです!」
「ほう?(もみ手)もちろん聞かせていただけるんですよね」
「私は読者に挑戦する!」
「番組が違います」
「真実は一つ!」
「それも違います」
「じっちゃんの名にかけて!」
「それだけは許さん!!!」
「ごめんなさい。いえ、先ほどのお話で全て解決しました。事件の内容をお話する前に解決なさるとは、名推理ここに極まれり、ですな! さすが御手洗先生!」
「さっぱり分かんないよ、御手洗」
「僕にだって分かるもんか。警部、紅茶でも飲んで落ち着いて下さい」
「(盛大にすする)うむ、これはミントンのダージリンですな!」
「うわあ、当たりですよ! 驚いちゃった! 警部、鑑定士にジョブチェンジですか!?」
「今のところアビリティは“ 紅茶 ”、“ ワイン ” “ 骨董品 ”です!次は日本酒をゲットしようと、」
「僕にも分かる話をしてくれたまえよ(鬱)」
「はいはい、先生、実はね、この二週間の間に園児に次々と異変が起こっていたのです。食中毒の疑いが持たれたのですが、園児は各家庭から弁当を持ってきておりましたし、この季節でしょう、原因とは考えにくいのですな。また、幼稚園からおやつが毎日出ておりましたが、全て市販のスナック菓子で、それらからも一切食中毒原因菌は検出されなかったのです」
「……僕らが持って行ったチョコレートに毒物が!? 子供達は、まさか……」
「いえいえ、石岡さん、症状は一過性のもので、みんな回復して元気に過ごしていますよ」
「ああ、良かった……」
「で、どんな症状だったんです?」
「誰彼かまわず、でぃーぷ・きす をしまくるというものですよ。幼児ですから、可愛らしい光景で済みましたがね」
「……」
「……」
「子供達の血液中からアルカロイド系の麻薬成分が検出されまして。よくよく調べますと、アフリカのウィッチドクターが、惚れ薬と称して使用する薬草の成分らしいんですよ。分析官の中に、天然麻薬に詳しい者がおりましたんで分かったのですがね。そんなもの、なんで幼児に与えたのか、また摂取経路が謎だったんですが、納得しましたよ」
「……」
「……」
「お二人のファンのお嬢さん方が結託して作った“ 特製 ”手作りチョコレートだった訳ですなあ。彼女らの暗い情熱が伝わってくる逸話ですねえ。あ、ファンの皆さんのことはご心配なく。習慣性も致死性もないハーブのようなものですし、先生方にご迷惑が掛かるのは本意じゃありませんから、私の胸の内にしまっておきますよ。じゃ! どうもありがとうございました!!(ばたん)」



「……あっち行けよ、石岡くん」
「大丈夫だよ(泣)麻薬入りに当たらなくて良かった……」
「これだから女性って生き物は! 菓子屋の陰謀に簡単に踊らされ、あろうことか要らぬ工夫までして僕らを真性ホモにしようと企む! 古代から呪術の類においては必ず女性が抜きん出ていたものだ。その理由は色恋の復讐、」

 その後、御手洗さんは三時間に渡って女性論を展開したという。
 その間石岡くんは暇だったので、真性じゃないってことは仮性なのかな、とか考えていたとさ。






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