泳げない代わりにブラスカは水面に立つ。異界送りの時だけに生じるこの能力は、召喚士になった時点で自然に身に付いたものだ。
この、水を厭うような自分の能力が、ブラスカには少しだけ恨めしかった。どこまでも水に疎まれ妻の領域から弾かれていると、それが少しだけ恨めしかったのだ。
雷平原、ベベル、そしてナギ平原、重要な地点を結ぶ広大な光の森、マカラーニャ。その野営地にテントが二つ、寝息が一つあった。
「眠れませんか?」
テントから顔を出したブラスカに、夜警のアーロンが振り返った。焚き火が映り揺らめいて見えるアーロンは、不安定な存在のようだった。
「最後の分岐点、だね」
「……ベベルに一度戻りま、」
「その必要はない」
「……はい」
一瞬厳しい顔を見せてしまい、ブラスカは苦笑してアーロンの背中を叩いた。肩を竦めて叱られた子供の仕草をするアーロンの、一つに結んだ髪は しおれた尻尾のように見えた。
「アーロン……」
続く言葉は飲み込む。慰めや励ましは、もう自分達には嘘くさい。アーロンもブラスカを見上げ、目を閉じるようにして笑った。
「明日はナギ平原だ。歴代の大召喚士に嫌われないように、禊を済ませておくよ」
「はい、お気をつけて。お一人で大丈夫ですか?」
「ああ、この野営地付近だけは、不自然なくらいに安全だからね」
聖なる泉は「神聖」とは「安全」の意であるかのごとく平和を映す。禊、という事もあってかアーロンもそれ以上は護衛するとは言い出さず、ブラスカは一人、泉に向かった。
下草は柔らかく、夜の風にさわさわと眠そうな音を立てていた。
それに高く澄んだ音が時折混じり、ブラスカは森の奥を見やる。古くなった枝が砕け折れる音だ。鉱物の塊にも見えるこの森が、 確かに息づいている証の音だった。折れた枝は砕け散りながら、小さな鈴を何十も振るような囁く音色で風に舞う。運ばれていく小さな粒は、いずれ地上に落ちて砂となり、この森を育てる土となる。
その事を思ってブラスカは足音を潜めた。昼間にもきっと同じように聞こえているのだろうが、夜の星々と同じく動物の気配が少ない夜の森に、命のサイクルはひと際鮮やかに響くからだ。
しずしずと足を運び泉へ至る道を下り、ブラスカは来たままの足取りで躊躇なく水に入った。召喚士の装備は眠る前に脱いでしまっているから、夜着代わりの薄い衣のまま泉に浸かる。
「少し……冷たいか」
泉の周りは他の場所よりも少し暖かい。スフィアの泉も同様だ。幻光虫の濃度に伴って、土地そのものの活性が高まっているため、と言われている。それでも夜は眠りにつくのか、水はひんやりとブラスカの衣を這い登った。
鉱泉のような柔らかな肌触りの水に泳げない自分を思い出し、恨めしくブラスカは指先を洗った。
優しい水、纏わる水。
きらめく森を映し夜を吸い込んで、泉はしんしんと眠っている。ブラスカの体が作る波紋が幾重にも広がって、水面は文句を言うようにさざめいた。
きん、とまた、高く音が渡った。しゃらら、と響いて消える。
人も、そのようであったなら。
ブラスカは目を閉じてエボン礼を泉に贈った。
生き、死に、ただ土に還る。そんな簡単な事が難しい。異界送りが絶えて召喚士が役目を終える世界、それもまた、ブラスカが理想と定める場所だ。長く寺院に勤め生死を見つめてきたブラスカには、召喚士という存在そのものが、スピラの苦悩の一つであるとすら感じられる。
「それはまた、後の世代に頼むとするか」
呼応するように、ブラスカの腰にささやかな波が寄った。ふ、と苦笑してブラスカは水を掬い取った。
「今夜は仲間に入れてくれるのかい?」
恨めしく憎らしくそして焦がれる透明な場所。御せないのならばいっそ奪われ、肺の中にまで満たしてうっとりと沈んでいたいと思うようになったのは何時からだったろう、誰のせいだったろうか。
ひたり。
小さな水音が風の隙間に落ちた。期待していた水音だった。
振り向かず、ブラスカは気がつかないふりで深みに進む。追ってくる水音もまた、ブラスカの知らぬふりを知っている。しばらく二つの水音は円を描きながら追いかけっこを楽しんでいたが、ふふん、と意味の無い自慢げな鼻息に、とうとうブラスカは小さく笑いながら顔だけで振り返った。
「なんだ、真夜中に水風呂か?」
何のためなのかさっぱり分からない自信に満ち溢れたジェクトが、ブラスカの真後ろで腕組みをしていた。
「召喚士が神聖な泉で沐浴をしているんだよ」
くる、と背を向け、ブラスカは答える。
「ふーん、神聖、ねぇ」
ブラスカが作る丸い波紋を小さな波が千切り取った。波を横切りながら、柔らかく滲んだジェクトの姿がブラスカのそれに重なる。
「冷てぇだろが、風邪ひくぜ?」
「ジェクトは上がっていればいいよ」
「俺様はてきとーに体温調節出来んだよ」
「器用だねえ」
「おうよ」
言うやいなや、ジェクトはブラスカを背後から羽交い絞めた。ごつい手が迷うことなく腰の中心を服越しに掴む。ジェクトらしい誘い掛けだった。が、
「……ジェクト!」
思わぬ厳しい声に、ジェクトは思わず手を緩めた。ブラスカは、美しい魚のように腕の中でぬめって回転し、随分と真剣な顔でジェクトを見上げた。
「な、何だ、マジで儀式ってか?」
「そう、そうだよ、儀式だね」
「そ、そか、じゃ、俺様は、」
岸に戻ろうとブラスカを解放して背を向けた途端にバンダナをぐいっと引かれ、ぐえ、とジェクトは顎を上げた。
「何すんだ!」
「違うんだよ、順番が」
「はあ? 順番だぁ?」
「触る順番」
だろう? とブラスカが首を傾げて見せると、銀色の糸が長く散った。ふーん、とその顔を眺め、ジェクトはにやりと笑って腕を組んだ。
「順番、ねえ」
「物事には順序というものがあるんだよ?」
そりゃ初耳だ、と瞼を深く被せた目がブラスカを見下ろす。数歩下がって深みに腰を漬し、指先で手招くブラスカの策に嵌る事にしたようだ。ぴしゃり、と乱暴なジェクトの波が飛沫を上げれば、ブラスカはその分下がる。じりじりと獲物を狙う目が二組、絡み合った。
胸の下まで水に浸かったところで待っているブラスカに、鼻を鳴らしてジェクトは腕を伸ばした。濡れた衣を掴んで引き寄せると、背中に手の平を当てた。
「はずれ」
容赦なくぴしり、と言い放つブラスカは言葉だけでなく全身が冷えている。深く抱き締めるために片手を尻の上に置くと、つねって剥がされた。
「だから、どうして君は下の方ばっかり気にするんだ?」
呆れながら笑いを含ませる声に、単純にそれじゃ上か、とジェクトの両手が移動する。薄い衣が貼り付いている肩を包み、耳の上にキスを落としても、まだブラスカは両手を伸ばして突っ立っているだけで合格点をくれない。邪魔な衣服を剥がしてしまいたい気持ち一杯のままジェクトはそこから離れ、首筋に触れた。幾分温かみを保っているその肌は、独特のきめ細やかさで手の平に吸い付き、逆にジェクトの唇を吸い寄せた。歯を立てながらちらりと顔を盗み見ても、ブラスカは、つい、と顎を上げたまま澄ましている。
「……まだ当たんねぇのかよー」
「目立つところに痕をつけたね?」
互いに逸らして含み笑う。
「俺様の本気を見せてやろーか」
「よろしく頼むよ」
ジェクトは右手を滑らせた。首から肩、そして腕にするすると撫で降りる。ブラスカは軽く首を傾げてその道筋を眺め、少し目を細めてまつげを揺らした。ジェクトは二本の指を手首の柔らかい部分に回し、手の平をくすぐった。悪巧みそのものの互いの眼差しを至近距離で受け止め合いながら、二人の中指が触れた。ジェクトは指先同士を軽く引っ掛け、うやうやしくブラスカの腕を持ち上げた。

「……おーい」
爪を咥えるように指先にキスを贈るジェクトに、ブラスカは小さく首を横に振る。
「早く当てないと朝になってしまうよ?」
意地悪な視線にジェクトは天を仰ぎ、そして、
「よし、これで決まりだ!」
と自信たっぷりに両腕を広げた。やってごらん、とでも言うようにブラスカは肩を上げ、ジェクトはゆっくりを腕を上げてブラスカのこめかみに指を這わせた。味わうように指に髪を纏いつかせ、頭の丸みを楽しみながらゆるりと撫でる。しかし、ブラスカは上目遣いに見上げるばかりだ。
「……マジ?」
ジェクトはブラスカの頭を胸に抱いた。何度も髪を撫で、抱き返す腕を待つがその気配は無い。
「……これも悪くはないけどね」
くぐもった笑いを漏らしてブラスカはジェクトに体を預けた。押し付けあった体は二人とも興奮している。
「ったく……」
「こっちの台詞だよ」
ごそごそとブラスカはきつい腕の中からジェクトを見上げた。
ブラスカは笑っていた。幸せとはそのようなものだと、そんな顔で笑っていた。夜、一層艶かしく反射するあえかな光の森をその白い面と銀の髪に映し、 ブラスカはガラス細工のようにジェクトの胸にあった。
このまま抱き潰してしまいたい。
急に、そんな言葉が脳天を貫き、ジェクトは動きを止めた。神経は奇妙に冷えざえと、思考は焼け付くようだ。
スピラの苦悩の螺旋、その頂点に鎮座する訳の分からない怪物に殺させるくらいなら、ここで粉々に壊してしまいたい。砕け散れば、高く美しい音を聞かせながら光る破片がこの胸を切り刻んでくれるに違いないのだ。
ひた、と水音が響き、ブラスカの腕がジェクトの頬に触れた。ジェクトの体温が移ってほのかに温まったブラスカは、ただ笑んでいる。
「美味しいものは、最後まで取っておく性分かい?」
私は違うんだよ、と囁きが聞こえ、ああ、そこが残っていたか、と思う間も無く唇が触れ合う。が、触れたと分かった時には離れ、 ブラスカは笑みを食んだままジェクトの腕からするりと抜け出した。
逃げるように、追わせるように、ブラスカは浅瀬に進む。
青い闇、浮かぶ肌、重なりながら遠ざかる波紋。澄んだ水音には薄いガラスが 割れる音が混じり、ジェクトは荒々しく波を立ててブラスカの腕を引いた。
「待てよ!」
切羽詰った声に驚いて振り返ったブラスカは凶暴な力に抱きすくめられた。
「ジェ、」
言葉を唇が覆う。熱い舌と吐息が燃やすように歯列を割り、しなる背に腕が食い込んだ。無いものを探すようなジェクトの余裕無い舌に、ここだよ、と与えれば即座にきつく巻き込まれた。飲み込まれる錯覚を起こしてブラスカはジェクトの背中に縋り、幸福な目眩に酔い潰れる。響く水音は唇からか腿を洗う湖面からか、貪る口付けはやがて溶かし合うように穏やかに深まっていく。舌を重ねてじっと味わいながらジェクトが目を開くと、ブラスカもすうっと瞼を上げた。視線がぶつかり、二人は唇を離して小さく笑った。
「ゆっくり食べていいんだよ。逃げたりしないから」
子供に言い聞かせるようにブラスカが言えば、
「腹が減って仕方ねぇんだよ」
とその胸に甘えてジェクトが答える。
「もー、いいんだろ?」
問うものの、何があっても止めない動きでジェクトはブラスカの衣の前を開いた。鎖骨の間に舌を這わせ、小さく主張している乳首を指先で転がし、身じろぎをするブラスカの腰を空いた手で撫でる。谷間を通る指は性急に後口を揉み解し、わずかにぬめりのある「聖なる泉」の力を借りて体内に潜り込んだ。一瞬そこは緊張したが、再び唇が合わさると次第に弛緩してゆく。
「ふ……っ、ジェクト……」
片足がジェクトの腰に絡んだ。もっと深く、とねだるようにブラスカは体を揺すった。
「あったかくなってきたか?」
意趣返しとばかりにジェクトは浅い場所ばかりを狙い、もどかしく腰を降ろそうとする体を引き上げては固定する。
「……ジェクトッ……」
「ゆっくり食っていいって言ったのはおめぇだぜ?」
にや、と笑ってジェクトはある一点を爪先で掠めた。びくり、とブラスカの体が跳ねる。それきり再び浅く攻め続ければ、ブラスカの足がきつく巻き直った。欲情にきらきらと輝く青い双眸を満足げに眺めると、ジェクトは開いた腰にそそり立つ性器を軽く撫でた。
「ああっ!」
大きな声を上げてブラスカは仰け反った。自分でもその声に驚いたらしく、ぎゅ、と唇を噛む、が、長くは続かない。裏側を根元から指の背で撫で上げられ、押し込むように先端を刺激されるとまた嬌声が上がる。
「あ……っ、ああ、あ、ジェク、ト!」
前後を焦らさせ、ブラスカは頭を振ってぐずる。頭を振る度に髪が乱れ、乱反射する光がジェクトの目を射った。星の瞬きのような掴み所の無い銀色の光は、散ってゆく花のようでもあり、一瞬ジェクトの脳が白けてしまう。ち、と舌打ちと共に乱暴に指を抜くと、ジェクトは猛った自身を引き摺り出した。ブラスカのそれと擦り合わせ、背中に爪を立てる腕を剥がすと二つまとめて握らせる。ジェクトの肩に顔を押し付けながら、ブラスカは水ではないものでぬめる熱い二つの塊を熱心に撫で上げ始めた。
「ジェクト……ジェクトッ! は、早、く……」
ブラスカの指は執拗に先端を揉み合わせる。それぞれの垂らす先走りが混ざり、ぐちゃぐちゃと音を立てる指先から水面に滴った。
「糸引いてるな……」
触れるか触れないかの距離で背中を撫で上げて煽ってはいるが、ジェクトも限界だった。声にそれを読み取ったのか、ブラスカはここにきてやおら、挑戦的な視線を投げた。ふん、と耳たぶを歯で弄びながら、ジェクトはいきなり両方の乳首をきつく摘み、途端に仰け反る白い喉笛に留めを刺すように噛み付く。
「く、う……早、く、」
「なんだ?」
「ジェ……クト……」
「んん? 入れて、って言ってみ?」
「入れて! ジェクトの、入れて……っ」
ほとんど間髪入れずにブラスカは叫ぶように言った。
「はは、インランショーカン、」
歯がぶつかる勢いで口付けで塞がれる。ジェクトは苦笑しながら高く片足を抱え上げ、最後の仕上げとばかりに三本の指をまとめて後口に押し込んだ。
「……っ、ふっ……!」
息の抜ける音と肉をこじる音が泉の上を滑る。しがみ付くブラスカの体はぶるぶると震え始めた。
「まだ、イクなよ」
びしゃり、と最後まで腰に引っ掛かっていたブラスカの薄衣が落ちた。
「よし……腰落とせ」
「は、あ、あ」
深く息を吐き、ジェクトのバンダナを握り締めるブラスカは肩に噛み付いた。ぐっと力がこもって細く血が垂れた。
「……っ、あっ!」
「きっついな……」
「はいら、ない、かも、」
「んな訳ねーだろ、ほれ」
先端を飲み込め切れずに収縮を繰り返していた後口は、一つ大きくジェクトが揺すると、一気に根元まで飲み込んだ。衝撃に身を縮め、つれる程にきつく右足を腰に絡めて、ブラスカは何度も大きく呼吸した。
「今日は……なんで、こんなに、大きいん、だい……」
吐息の合間に切れ切れに囁きが漏れ、うう、とうめきながらブラスカの歯が鎖骨を噛む。
「んー? オメーがそんなザマだからだろ」
「大きい……」
「デカイの、好きだろが。なあ?」
「す、き。ふふ、ふ」
支える手で尻を広げられてブラスカは喉の奥で笑った。伸ばした舌がジェクトの喉をねっとりと這い上がって唇に辿り着く。下唇に吸い付く感触がくすぐったく、 ジェクトは片目を閉じて強く揺さぶった。
「は、あ、は、はは」
「なんだよ……」
「ふ、くくく、」
喉を上げ、急所をまざまざとジェクトに見せ付けながらブラスカは笑う。思い切りの締め付けに眉を寄せて睨みつければ、どうだい、と言いそうな目で見返す。
「……たくよ、性格わりーな」
「楽しい、ね、ふふ、は、あ、」
ブラスカは澱みなく喘ぎ、笑い、そしてジェクトの顔中を舐めた。仕舞いにはジェクトも笑い出して、互いに顔を唾液だらけにして舐め合った。
「こんなじゃイケねーじゃねーか、やめろってばか! ははは!」
「あは、は、気持ち、いいよ、ふふふ!」
ぬめる音や熱く匂う肌が場違いなくらいだった。からり、と晴れ渡ったような笑い声を途切れ途切れに漏らすブラスカをジェクトはいきなり抱え上げた。
「ちっとは黙ってろ!」
反転した視界は気がつけばおぼろに霞み、眼球に冷たい刺激を感じてブラスカはぎゅっと目を閉じた。挿入したまま水に沈んだのだと理解し、さすがに慌てて頭を起こそうとしたが、ジェクトはきつく抱き締めて口付けてきた。
ふうっと息が吹き込まれる。隙間から漏れる泡の粒が渦巻きながら上昇するのをブラスカは驚いて見上げた。揺らめく水の中、ジェクトの呼吸が注がれ続ける。悪戯に成功した子のようにジェクトは目で笑い、森から零れる光の破片がきらきらと水面を網目のように覆っていた。
ああ、これが。
これが、妻が知っていた世界、ジェクトが情熱を捧げた世界。
途切れる事なくジェクトは息を与え続け、水草のようにブラスカの髪が漂ってその首に絡む。太い筋肉を纏った腕にがっちりと巻きつかれながらブラスカは目を閉じた。 力の限りにジェクトを抱き締め、快楽よりも安心に身を任せてブラスカは目を閉じた。
「大丈夫か?」
ブラスカを抱きかかえてジェクトは岸に上がった。ブラスカは腕の中で荒く呼吸をしているが、どうやら情事の余韻ではないようだ。
「すごいね! あんなに息が続くなんて信じられない!」
「んー? あと半時間くらいは潜ってられっけどよ」
「私に息を入れながら!?」
「一人なら二時間くらいは余裕だな!」
「信じられない……!」
羨望のまなざしに気をよくしかけ、しかしジェクトは、はたと気付いて肩を落とした。
「……つかよ、ご感想はそれだけか、ああん?」
この俺様のスペシャルサービスに、ガキみてーに喜びやがって、などと、ブラスカを草の上に降ろしながら拗ねた顔でジェクトは呟いた。その、べしょ、と腰を降ろしてあぐらをかいた側に、ブラスカはそろそろと這い寄っていく。
「ふふふふ」
「……なんだよ!」
濡れた髪を手繰りながら、腿に頭を乗せてブラスカは笑った。
「こんなに笑ったセックスは初めてだよ!」
「言いたい事はそれだけかー!」
ごしごしと頭をこね回され、またブラスカは声を上げて笑った。そのままもつれて倒れ、いつまでもくすぐり合いながら二人は低く笑い続けた。
涼やかな砕け散る命の音を掻き消して、二人の声はどこまでも流れていった。
いつか
いつか、あの子も知るのかもしれない
水際のさざめく喜びの歌を手放し、美しく輝く水面を。
かけがえのない者の瞳の向こうにある、光の森を。
そのために生きたのだと、奇跡のような出会いに目を眩ませながら
知るのかも、しれない。
7777HITありがとうございました! (2003/5/19)
なんと、Rさんよりお贈りした以上の素敵なプレゼントが。
豪華イラストをいただいてしまいました。嬉しいー!
本当にありがとうございます!
いつになく真剣なジェクト、苦しいくらい愛しさに溢れたブラスカ様の
表情、あまりにもイメージ通りのイラストに踊る踊る管理人でございます。
Rさんの華麗かつお茶目いっぱいの世界をもっとご覧になりたい方、
イラストへの感想などは、こちらからどうぞ。 (2003/7/28)
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