ここからは渋ティ 現代パラレルシリーズ 「落下傘」です。

私にしては特殊な話なので前書きをおきます。

この「落下傘」は夢のザナルカンドが舞台ですが、内情は現代日本とかアメリカとかのありがちな都会です。そしてありがちな事に、アーロン(34)は黒っぽい社会のえらい人で、ティーダ(16)はそのジュニア部隊のようなものに属しています。
更に涙がでるほど月並みに、ティーダはお金を持っていない綺麗な少年です。そういうのに付き物の抗争とかはよく分んないので無いです。なんかのたくってるだけです。そして色々あからさまです。

これで大体、どんな感じかはお分かりいただけたと思います(?)
ちゃんと私の脳内のみで構成されたものですが、どこかで見たようなストーリーになること請け合いです。そんな話でも構わないという方、お進み下さい。年齢制限はありませんが女性向要素が強いです。










柔らかい殻

 それは少年特有の曲線だった。
 滲む夕闇が窓を割るように差し込む部屋の中、ほの紅い曲線は微かに身じろいだ。
「もう、帰んの?」
 枯れた声は行為の後だからではなく、彼が大人という濁りに足を踏み入れた証だ。
「現金が尽きた」
 関係の限界をあからさまに告げてアーロンは上着を取り上げる。
「おごるからさ」
「そんな余裕があるなら食え」
「じゃー、カードで承りまっす」
 腕に絡む骨ばった指を払い落として立ち上がると、アーロンは懐から剥き出しの紙幣を掴み出してベッドに撒いた。ひらり、と落ちた一枚を細い腕が追って摘む。
「……うっとーしー」
 なんだ、と眉を寄せて見下ろすと、紙幣の上に寝返ってティーダは指に挟んだ一枚を眺めている。
「この時間だともう一人客取らないと」
 めんどー、と怠け者の声を出してティーダは枕を引き寄せて胸に抱き、サイドテーブルの上から銃を取り上げるアーロンを上目に見つめた。
「ならばさっさと済ませればいい」
「あんたはどうだったんだよ?」
 ティーダは背中を向ける男の袖を掴み、彼が動くままに引きずられてベッドからずるりと落ちた。それでも袖を離さないティーダに溜息と共に上着が投げられる。
「どうとは」
 中に何枚かの金色のカードを確認し、ホントに金無いや、と呟いてティーダはスーツを放った。
「あんたさ、一日にどれくらい稼いでた?」
 床から仰向けにアーロンを見上げるティーダはずり落ちたままの姿勢で片足をベッドに乗せている。誘っているつもりだろうかと、アーロンは剥き出しの性器を見て考える。
「俺は月極だった」
「パーキングかよ」
「確かに使うのは主に夜だな」
「つまんね。で、幾ら?」
 アーロンが言った数字を聞いてティーダはがっかりして目を閉じた。
「そんなにヨかったわけ、あんたの穴」
「さあな」
 アーロンはベッドに散らばる紙幣を払い落とし、代わりにティーダを拾い上げた。その太い腕を引き寄せ、締めたばかりのネクタイを解いていくティーダの目の青は、この街の灯りのようにどこか澱みしかし鮮烈さを含んで、つまらなさげにアーロンを眺めている。
「イイ穴のおかげでゴールドカードかー」
「腕は買えん」
 買ったよーなもんっすよ、とティーダは両手を広げて伸びた。白くぬるい肌の上、乾きかけた血のようにネクタイが長く流れる。その端をアーロンが引くと、ティーダはくすぐったげに身を捩って反対の端を掴んだ。
「悔しければ昇ればいい」
 絹のすべらかな感触を手繰り寄せて言えば
「やってやるよ」
とまだ細い手首が紅と絡む。近い距離で視線を合わせると淡い色の唇が開いてつるりとした舌がアーロンの顔傷を舐め上げた。晒された喉に歯を立て絡まるままに手首を括り、無邪気に声を立てて笑うティーダをシーツに押し付ける。
「大人しくしていろ」
「解いてー」
 ティーダは胎児のように丸まり、胸の前の両手を嬉しげにアーロンに差し出した。くしゃくしゃの上着を拾って音を立てて振り、アーロンは僅かに笑った。
「とりあえずは金だな。食い物も買ってくる」
「ヌードル!」
「分かっている」
 上着に腕を通しながら靴を引っ掛け、アーロンは広くない部屋の扉を開けた。
「バナナチップも」
 分かっている、と振り返ればティーダは猫のように背を反らしていた。やたらと大きい窓から零れる気の早いネオンがティーダを濡らし、白く柔い輪郭を猥雑に染めていた。
 彼はゆっくりと胎児に戻ると括られた両手を大事そうに胸に抱き、アーロンに向かって目を細めた。






FF10 100のお題