銀色のダリア

 オレのウチのれいぞうこには、先生に言われたとおりのたべものが入ってるよ。
 キュウリとトマトとレタスとニンジン。それとハム。たまにベーコンも入ってる。チーズとミルクとバターとジャムは、あさごはん。なっとうも入ってるけど、あんまりたべない。……たべるけど。しょうみきげんギリギリまでおいておくんだ。においがイヤだもん。
 たまごは、かってから一しゅうかんだけ、生でたべてもいいって先生が言ってた。ごはんにかけて、おしょうゆをかけるとおいしい。のりもちぎって入れたらもっとおいしい。一しゅうかんたったらゆでなきゃならない。ゆでるのはけっこうめんどうなんだ。なべに水を入れて火をつけて、おゆができたらたまごを入れる。火にかけるのがめんどう。ナベに水を入れて、ながしにおいて、イスに上って、ナベをもち上げて、コンロにおいて、またイスから下りて、火をつける。ごはんをたくのもにてるけど、なんか、たまご一つゆでるのに、上ったり下りたりがめんどうなんだよね。
 ゆかになべをおいて、火遁の術をかけたらきっと楽なのに。それをするとゆかがコゲるからダメだって先生が言った。オレのウチはアパートで、シャクヤだからダメだって。上忍になったらモチイエをもらえるから、そしたらやっていいって。でも、上忍なんてうんと先だし、毎日たんれんしてるから豪火球とかになっちゃってきっと家がぜんぶもえちゃう。だからたぶん、ずっとイスをつかわなきゃ。
 めんどうだなあ。オレ、早く大きくなるんだ。手がね、小さいんだって。なんでかなあ。もう中忍なのに、くないがうまくつかえなくってハズカシイ。先生が、もって歩いたらダメだって。ウチにあるよ、たくさん。毎日きれいにみがいてるんだ。先っぽをさわるととがってて、今にも切れちゃいそうでどきどきする。へへ、三回切っちゃったんだ。ここと、ここと、ここ。だいじょぶだって、もう切らないもん。
 今はねえ、手裏剣と千本しかつかえないんだ。手裏剣もさ、なんかもちにくくてなげるとゆび切っちゃうんだけど。くないって一撃で敵を殺せるんだよね、おじさんできる? ……いいなあ。え? だって、わんりょくないもん。にぎってることはできるけど、ふり回すとオレがとんでいきそう。それに、おもくって枝走りがおそくなっちゃうでしょ。いいなあ。くない、ちょっとかっこいいもんね。おじさん、今いくつもってるの? えーすごい、どこにしまってるの? ……いじわる! おしえてよ、ねえ、おしえてってば!



 任務は単純なものだった。大名から大名への親書の配達。中忍一人で充分だったが、その中忍が六歳だったもんだから、俺に目付けが言い渡された。
 見せられたこの子の履歴は年齢相応に短いものだったが、内容は凄まじかった。両親と死別、三代目が養育し、五歳で下忍になってからはアパートで一人暮らし。下忍になって一年も経たずに中忍試験に合格し、この任務は既に七回目。これまでの任務は常にパーフェクトの達成状況だ。中には途中で抜け忍に遭遇し、始末をつけた、というものまであった。その任務は最終的にAランクになっていた。
 もちろん我らが火影はまだ六歳のこの子に殺しを任せるような無慈悲な長ではない。その可能性がある任務には、必ず俺のような目付けが伴われる。まずは目の前での他者の死に慣れさせる。それは、惨いようでもこの子の将来のためだ。何と言ってもあの『白い牙』の息子に、穏やかな人生が待っている訳が無いのだから。

「おじさんまって! サンダルぬげた」
 がくっと俺は肩を落として手近の枝に止まった。枝渡りの最中だ。追われも追いもしていないからいいものの、くるんと回りながら地面に降りて、サンダルを取りに行く子供に呆れた声を出さずにいられない。
「足に合ってねぇのか?」
「すぐに小さくなっちゃうから、大きめをはくことにしたんだ」
「戦闘中に脱げたら取りに戻るか? すぐに使えなくなっても死ぬよかマシだ、足にぴたっとしたのを履け」
「うー」
「替え、持ってねぇのか?」
 いつもはもってるんだけど、と子供はサンダルを突っかけながら俺を見上げた。仕方ない。俺は隣に飛び降りると子供の足元に屈んだ。
「応急処置だ。とりあえずこうしとけ」
 持っていた手ぬぐいを裂き、足首に巻きつけてから両端を安定良くサンダルに固定した。両足にそうやって「バンド」を付けてやる。
「……ありがと」
 どこかふて腐れたように子供は言った。まだ言うだけ行儀が良い。銀色のばさばさの髪と気が強そうな吊り目をそっぽ向けて、その子はさっさと枝に上がった。
「おじさん、おいていっちゃうよ!」
「おーおー、言うねえ」



 おじさん、上忍ってうれしい? ……だからね、中忍だとできなかったことができるようになるんでしょ? えー、そんなことないの? ふーん。オレ、きっと色んなことができるんだって、すごく楽しみにしてるのに。……うん、きょうとあしたで、オレがちがうヤツになったりしないよね、それは分かってるけど。え。オレってにぎやか? だってね、いっしょに任務に行く人、みんななんかしゃべんないもん。なんとか上忍ってよばないと、へんじしてくれないし。だからオレもしゃべんないんだよ。しずかだからガキでもマシだなって言われるよ。上忍って、そういう人たちだって思ってた。出ぱつしてさ、おじさんがヨタバナシするからびっくりしたよ。だからしゃべるんだよ。
 ふーん、おじさんはふらんくなのかー。ねえ、ふらんくってなに?



「止まれ」
 子供の質問に答えようとした口で低くオレは言った。ほんのかすかだが、背後に気配を感じた。進めば罠にはまるのかもしれない。止まれば襲われるのかもしれない。どちらがマシかと問われれば、止まる方に決まっている。子供はぴょん、と飛んで高い枝に上がった。
「おじさん、二人、つけてる」
 言いながら、のんきそうに枝で大回転をやらかした。途端、蛇腹の長いくないが子供に飛んだ。素早い影分身で枝から落ちたように見せかけ、本体はものすごい速さで後方に下がる。
 あの年で影分身か。俺もまた、影分身を残して子供の前に身を隠した。
「出て来い!」
 『俺』が適当な事をしゃべっている。相手は二人、落ちたはずの子供が消えたことを確認し、『俺』ににじり寄る。
「たたかうの?」
 子供がこそりと言う。見事な気配の無さ。声もまた、ぴたり、と俺までにしか届かない大きさだ。生き延びる、ということをあの男が徹底的に教え込んだのだ。敵二人は、逃げ始めた『俺』を追って消えた。
「このまま逃げる。行くぞ」
「うん」
 下生えの中を、低い姿勢で駆け抜ける。屈む分、俺の速度は落ちて、子供と同じになる。
 それにしても速い。チャクラの練りと分散が上手過ぎる。これは、ほとんど天分だろう。感心しつつ気配を探ると、追手はあっという間に影を見破り俺達の背後に迫っている。どうやら地走りのプロだ。
「飛べ!」
 枝に移り、少しでも距離を開ける。
「あの川辺で迎える!」
「オレ、水に入る!」
 子供は俺の返事を待たずに掻き消え、俺は最後の大跳躍で見渡しの良い川辺に立った。僅かの遅れで目の前に現れた二人を改めて眺め、俺は少々眉を寄せた。毒の臭いが風に混じる。
「親書を渡せ」
 簡潔に目的を一人が告げ、「断る」と返す。俺の言葉が消えない間に、ほとんど雨のように千本が降った。まさに『千本』の名に相応しい鮮やかな手際、変わり身で交わした俺を追って、く、と虫の群れのように向きを変えて枝に移った俺を追ってくる。
 火遁を盾に、身の近くに風遁の鎧、千本を燃え飛ばし、更に上に移る。
 先ほどの彼らの走りには独特の『砂音』が聞こえた。土遁使いだ。足の裏から砂を撒き、どんな地形や地面をも整えられた陸上競技場に変えて最速の速さを保つ、地走りのプロ。砂の国の者に違いあるまい。親書を受け渡す国にとっての最大の脅威だ。
 大名の使いではなく、何かしらの有力者の差し向けた者だろう、厳しく顔を隠す事はしていない。力はそれほどでなくとも、この世は大地と天から出来ている。地を奪われた状態で闘うことを余儀なくされ、俺は枝を忙しなく移動した。相手は追いつけはしないが、完全に進路を読み、千本でコースカットしてくる。
 あの千本は内部が空洞だ。その空洞に特別軽い砂が詰まっていて、術に反応するようになっている。何度も火遁の盾と風遁の鎧で叩き落とすが尽きない。
「ち、どれだけ仕込んでやがる!」
 水に入る、と言った子供をちら、と思い出す。冗談じゃない、俺一人で片付ける。頭を振り、まずは一人目を予定通りの木に誘導する。一旦地に立ち誘い、足元に立ち上がった毒気を含んだ砂を振り切って一気に駆け上がると、相手もぴったり付いて来た。

「あぁ? なんだ、これは!」
 男は、枝と枝の間に浮かぶように拘束され、己の手足を捕らえた『糸』を切ろうとして逆に皮膚を裂いて暴れている。
 掛かった。手甲に仕込んだ女郎刀を強く引く。
「ぎ、」
 小さな叫びだけを残して地面に肉片が降った。二人に挟まれ、惑うように飛びながら木の枝沿いに仕込んだ極細の刃物だ。蜘蛛の巣のように、手足に引っ掛ったところで端を引けば良い。
 しゅるり、と風を斬り、女郎刀を手甲に納めると二人目に取り掛かる。同じ手は食わないだろう。相手は間合いを取り、得体の知れない砂の固まりを飛ばして来た。避けたところに当然の罠、毒針のむしろとなっている木の幹にくないを付きたてて舞い上がり、対面の松に飛ぶと見せかけ女郎刀に結んだくないを投げ絞り、更に遠い樫に叩きこんで飛び移る。案の定、起爆札だろう爆発が、松を跡形もなく吹き飛ばした。
 中々の技師だな。
 飛び散るヤニを避けながら樫から水辺に下りる。途端に見事な反応で地面が盛り上がり、割れた椀のような罠が口を開けるのを横目に水中に踊り込んだ。
 川底の砂までは、奴等の領分ではないということは知っている。印を結ぶと滝の盾、四方に囲って飛び出し、水面に足の裏を貼り付けた。
「諦めろ!」
 怒鳴るが相手は余裕の顔、欠けた耳たぶをいじって笑った。ち、と舌打ちし、また子供の姿を気にした。
「小瀑布か。やってみろ」
 砂が渦巻くように彼の回りを囲む。言われた通りの印を刻んでいた俺の目に、砂の渦がちかちかと瞬いているのが見えた。
 帯電!
 分かった瞬時に引いた水、跳躍は間に合わずに手の形に伸びる砂が俺の濡れた足を掴んだ。
「ぐあっ!」
 突き抜ける衝撃、心臓の震えがダイレクトに脳を叩いた。よろめき、足裏のチャクラが消えかける。このまま沈めば伝導体に浸かる、あの子の潜む水に電流が走る、踏んばろうと印を組んだ俺の顔の前、湧き出るように小さな固まりが飛び出した。
「やめろ!」
 みっともないほどに割れた声を上げる俺の手を綺麗にすり抜け、子供は怒った蜂のように、猛烈な一途さで欠け耳に向かって行く。
「ボウズ! 避けろ!」
 子供は、自分の三倍ほどもある、大きな砂の手をくるり、と回転してやり過ごした。二度、三度、捕まらない。
 砂の手は異常な速さを誇る。術者の視線の速さだからだ。それを、掠りもさせずに子供は避け、とん、と軽く飛んで欠け耳の頭に取り付いた。そして、束で引っ掴んだ千本を、閃光の動きで奴の目に埋めた。
「ぎやぁあああぁ!!!」
 振り解かれまいと激しく暴れる男の耳に噛み付きながら、子供は手のひらで千本を押し込み、入るところまで埋めていく。ひとしきりの末期の踊りが済むと、男はどう、と倒れ、子供は猫のように柔らかく回って地面に降り立った。まさに、猫とヒグマ、そんな体格差だった。
「……あな、あいた」
 子供は左手をぱたぱたと振っている。俺は辛うじて沈むことなく岸辺に辿り着き、子供の前に膝を付いた。
「……見せてみろ」
 手甲で押せばいいものを、手のひら側で押したから沢山の千本の穴から血が垂れている。
「よく、やったな」
 心中は穏やかではない。しかし、俺は言った。
「さすが、天才と言われるだけある。よくやった」
 へへ、と子供は笑い、腰のポーチから応急手当のキットを出して俺に押し付けた。
「手当てして、おじさん」
 おお、と手甲を外してやろうとすると、その手を引いて腰に当てる。
「オレじゃないよ、おじさんだよ」
「なーにいっちょ前な口ききやがる……」
 子供の手をぐい、と引き、川岸に連れて行って傷を洗った。
「痛くねぇか?」
「こんなの、なんでもなーいもん」
 しかし、薬を塗る時子供は少しだけ眉を寄せた。それが恥ずかしかったのか、
「りょうやく口ににがし、だよね」
と子供は笑い、
「それ、違うって」
と俺も笑った。そして、何故だかかわいそうな気持ちになった。その子が、堪らなくかわいそうになったのだ。



 数時間後、俺は子供を抱えて全力で里門に飛び込んだ。
 砂の忍達は、体内に毒を溜めて慣らす事で、手足に等しい砂に孕ませる毒から身を守っていたのだ。
 暴れる男の耳に齧りついて血をすすった子供は、その濃い毒にやられた。手のひらの手当てが済み、追手の死体を焼却処分する間に、子供は手足が痺れる、と訴え始めた。数十分後には高熱が出て、門を潜る頃には痙攣を起こしていた。
 医療団が治療にあたり、俺が持ち帰った砂から毒を速やかに特定して血清を与えた。血清の効き目は抜群で、紙色になっていた顔色は瞬く間に元に戻った。が、俺は安堵の息を吐けなかった。この子に殺しをさせてしまったばかりか、昏睡状態にまで陥らせたことで、酷い自己嫌悪に襲われた。
 もう大丈夫だ、と告げられて尚、忙しく看護人が動いている集中治療室の前、薄ぼんやりしたガラス越しに子供を眺めながら俺は寂しく長椅子の端に腰掛けていた。
「ご苦労さん」
 若竹のような、涼しい声が聞こえた。俺は、のろく頭を上げる。
「……いいえ」
「カカシが世話を掛けたね」
 ぶるぶると頭を振り、俺は彼に目を上げた。四代目火影と目されるその男は、光るほどに白い花弁がたくさん付いた花を抱えていた。それは、ガラスの向こうで横たわっている子供のばさばさ髪を想像させた。
「なんででしょうね」
「なんだい?」
「なんで、あんなチビが闘わなきゃならないんですかね」
 その答えは俺にもよく分かっている。
「……初めて殺したって?」
「砂の手を軽くかわしてね、千本を目に突っ込んで殺っちまいました。俺が無様を曝しちまったせいです」
 申し訳ない、と俺は頭を下げた。
 微笑んでいる彼が、どれほどあの子を可愛がっているか。任務の間、何度あの子は『先生』という単語を使ったことか。
「君の情報からね、カカシが倒したのは国をまたいで手配中の、ビンゴブックに載っている男だと分かったよ」
 へ、と俺は口を開けて、あくまでも涼しい顔の男を見た。
「CからSランクに訂正、だね。また伝説が出来そうだ」
 彼はかすかな皺を眉の間に作った。俺はそれを見ながら、今回の出来事の重要性を考えた。そして互いに無言で廊下に立ち、ガラス越しの灯りに照らされていた。
 不意に、きいっと軽い音で治療室の扉が開いた。若い女性看護士が顔を出し、俺達の雰囲気に少し驚いていた。まるで親友が死んだかのように、俺の顔は沈鬱だったろう。
「あ、あの、カカシくんがお二人と話したいって言っているんですけど……」
 遠慮がちに彼女は言った。
「意識が戻ったんだね?」
 ええ、と男に答え、看護士は思わず、というように微笑んだ。
「すっかり元気で。お腹が減ってるみたいですよ」
と俺達を手招きした。



 黄色い髪と背中を見ながら俺は集中治療室に入った。しゃっきりと背を伸ばして笑顔を貼り付ける。
「カカシ」
 男はそれだけ言い、子供の頭を撫でた。嬉しいくせに、イヤだという仕草でそれから逃れて子供は俺を見上げた。
「おじさん、だいじょうぶ? すごく走ってたでしょ」
 ずっと面布をしていたが、今はさすがに外されている。思った以上にあどけない顔で、真っ黒い目で俺を見上げる様子は、まるっきりてめぇのガキとおんなじだった。
「あんなの、なんでもねぇよ」
 確かこの子も同じような事を言ったな、と思う。子供は案の定、にや、と笑って目尻を下げた。
「お手柄だぞ。Sランクに引き上げだそうだ」
 えー、と子供は『先生』を見た。彼はベッド脇の小さな椅子にちゃっかり座り、教え子の鼻を摘んだ。
「けどな、これで一人前、なんて思うなよ」
「やめてよ、先生ー」
 ぶんぶんと頭を振り、しかし子供は笑った。それを見て、そうだ、と俺は思う。この子の目は笑うと細く下がって涙袋がふっくりと形を見せる。澄ました顔との劇的な違い、それが、かわいそうだと俺に思わせるのだ。ただ、意味も無く、かわいそうだと。
 睦まじい様子で語り合う師弟の側で俺は、布団からはみ出た子供の爪先を見ていた。天才と呼ばれるこの子の足の爪が、何度も何度も剥がれたせいで、溶けかけたようないびつな形になっているのを、眺めていた。

「とうちゃん!」
 ぎょ、と俺は振り返った。飛びついてくる小さい塊を両手で受け止める。
「ごめんなさいねえ、言っても聞かなくって」
 女房が後ろから呆れた顔で着いて来ていた。
「とうちゃん、げんきだよな!」
「俺ぁ平気だ。なんで来た? ん?」
「しんぱいだったもん! びょういんなんてヤダ!」
 困って女房の顔を見ると、肩を竦めて見せる。
「報せに来てくれた人と話してたのよ、あんたが病院に行ったって。それ聞いて、すっ飛んでっちゃったの、この子」
「全くなあ、もうちっと落ち着け、イルカ」
 服にガキをくっ付けたまま、俺は木の葉で最も有名な上忍に頭を下げた。あの子にも、騒がせて悪いな、と謝り女房もひたすら詫びを言って俺達は扉を開けた。
 
「おじさん」
 俺は扉の隙間で振り返った。
「ありがと」
 子供は『先生』に見せたものと同じ笑顔でそう言った。手には真っ白な花を抱えていて、今度は幸せそうに見えた。
「またな、次はチームを組もうな」
「そのときはぴったりしたサンダルをはいてくよ」
「はは、そうしてくれ。じゃあな、ゆっくり休めよ」
「元気でね、またね」
 手を振り合って俺達は別れた。



 後日、教師をやっている友人に聞いたところ、あの白い花はダリアという花で、九月十五日の誕生花だと教えてもらった。
 そして、誕生日に初めて人を殺してベッドに横たわっていた子供とは、あれ以来会っていない。






2003/9/14
NARUTO TOP